一杯のかき氷に在りし日の青年をしのぶ

新・あなただけは透析にさせたくないより、一節を抜粋。

私には、夏になるといつも思い出されることがあります。
それは、透析にも慣れた頃、時々通ったサウナで出会った一人の青年との懐かしい想い出です。
彼は、2周りも若いのに、私と同様に透析をする身でした。母ひとり子ひとりで、透析になってから会社にいられなくなり、母に心配をかけていると言っていました。
何故、透析患者の私や青年がサウナに?と思うことでしょう。慢性腎臓病(透析)になると無尿になり、汗もなかなか出づらくなります。1日に自由に飲める水がコップ2杯前後と厳しく制限されます。
しかし、サウナではさすがに汗をかくことができますので、汗をかいた分くらいは水分をとることができました。冷たい水や氷を口に頬ばるのが、ささやかな楽しみだったのです。(心臓バイパス手術をした現在は、サウナは危険であるため入ってはいません。必ず担当医に確認を。)
その彼と、ある夏の日にサウナでまた一緒になりました。
私達がサウナから出ると、休憩室のフロアーには、生ビールを美味しそうに飲む人々がいましたが、私達には望むべくもありません。
 2人で「いいなぁ~」と、私と彼はその光景をうらめしそうに眺めながらも、ふとメニューに目をやると「かき氷」とあるではありませんか!顔を見合わせてニヤリとしながら「よし!」と、多くの水を飲めない者同志でかき氷一杯を二人で仲良く食べようと意気投合しました。
ほどなく、テーブルに運ばれてきた一杯のかき氷。青年と私は、代わる代わる食べました。まさに、一杯のかけそばならぬ、一杯のかき氷でした。
残念ながら、その青年も今はいません・・・。
しかし、夏が来るたび、私はあの時に2人で顔を見合わせながら彼と一緒に食べた一杯のカキ氷のひんやりした美味しさを思い出すのです。

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